ルジャンドルの読書記録

ルジャンドル(Twitter id:nattogohan_suki)の、読書メモを記します。

読書記録:大正時代って、とっても近い? 『大正時代の身の上相談』

今回はこの本を紹介します。

 

大正時代の身の上相談 (ちくま文庫)

大正時代の身の上相談 (ちくま文庫)

 

 

大学生ビブリオバトルの上位入賞者が、この本を紹介しており非常に興味をひかれたのでさっそく取り寄せて読んでみました。これは、大正3年から11年にかけて読売新聞紙上に寄せられたお悩み相談とその回答をまとめた本です。1994年8月に発行された本でして、各相談・回答のあとに、編集者のコメントがつけられています。
現在の読売新聞では、「人生案内」というタイトルで、方々の識者がお悩みに回答する形式ですが、大正時代は新聞記者が回答していたそうです。

現代と同じような悩み!

 全部で129の身の上相談ですが、あまり現代との齟齬を感じることがなかったので驚きました!どちらかというと1994年の出版人がつけたコメントのほうが古臭いなァと思わされるものさえありました。
 読んでいてとっても印象的だったのは、自立志向で先進的な女性の相談が多いことです。持っている悩みは現代の女性が抱えるものとあまり変わりがないように思えました。
 たとえば、女医として開業して身を立てており、生活に何ら不自由しないが、生涯独身は少し寂しい。しかしそんなことを考えている暇はない。だとか、出産のために2か月ほど仕事を休んだらクビにされた人がいてかわいそうだ、とか、そういった相談です。しかも、それに対する新聞記者の答えもなかなか現代に通ずると感じられました。そんな人たちがいてさえ、昭和・平成の時代になっても女性の社会進出に壁がある、という問題はいまだ完全解決を見ない。これは相当根が深い、と思わされました。

現代とは違う社会通念

 とはいえ、現代とは到底趣が違う部分もありました。現代でも悩む人の多い話題ですが、結婚についてです。
 妻が処女でなかった、処女でないことを隠して結婚したら大事になった、処女でないので結婚するに忍びない、ナドナド男女ともに処女に対するこだわりが非常に強いことです。他の相談ではなかなか寛容とみえた当時の新聞記者も、この話題に関しては割合厳しい観念の下で回答しておりました。
 それと、親の決めた結婚だが、相手にどうも愛情が持てないなんていうのも結構見られました。
 そんなの、気にしなければいいじゃん、好きにやっちゃえばいいじゃんと思っちゃいますけれども、そこがまたその時々の状況でいかんともしがたくなってしまうのですよね。現代の私たちの暮らしや悩みも、未来の人から見れば「好きにすればいいのに」で一蹴されちゃうのかもしれません。

近い昔のことは、意外と勝手なイメージで形成されていることがよくわかって、面白かったです。

(初投稿:2017年1月29日)