ルジャンドルの読書記録

ルジャンドル(Twitter id:nattogohan_suki)の、読書メモを記します。

読書記録:『ウンコな議論』

今回はこの本を紹介します。

 

ウンコな議論 (ちくま学芸文庫)

ウンコな議論 (ちくま学芸文庫)

 

 虎の威を借るキツネのように、いささか衝撃的な書名をこのレビューのタイトルに据えたことには恐れ多さを禁じ得ませんが、ここには自らの産み出す議論にも「ウンコな議論」が少なくなく、この投稿もウンコになってしまう可能性があることに関する自戒が込められています。

 本書は、原著"On Bullshit"の邦訳であり、世にはびこる「ウンコな議論」、「屁理屈」がいかにしてウンコであり屁なのか、そしてそれが持つ性質とは何かに関して考察を展開した哲学書です。大変キャッチーなタイトルで、文字組も大きめ、かつ本文は67ページとイージーリーディングできそうですが、イージーリーディングというほど簡単ではありません。本書の特徴は、本文67ページに続いて、訳者の解説が61ページ分あることです。そちらがメインと思えなくもない内容にもなっています。

 本書の主張で最も思うところがあったのは、
「正直者も嘘つきも、真実を基準にしてそれに対する行動を選択している。つまり真実の方向を向いた存在である。一方でウンコ議論者は、真実を一向に意に介さず、思い思いに行動している」
という分析です。(これは引用でなく要約です)
 本書のもととなる文章は、1970年代に執筆されたとのこと。著者のフランクファートは2005年に名前を出して出版したところ大ヒットし、米国から日本の私のところへ12年くらいの時をこえて渡ってきたわけですが、ちかごろのネットのフェイクニュースやらなにやらをみるにつけ、今のこの状況を知ったうえで書かれたのでは、という思いを禁じ得ません。

(初投稿:2017年3月27日)